日本ではADHD(発達障害)女性は生きづらい/活躍できる場所を選ぼう

ライププランABC編集部

発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)は、集中力の欠如、多動性、衝動性といった特徴を持つ神経発達の特性です。

これは性別を問わず見られるものですが、女性の場合、特に日本社会において独特の生きづらさを抱えることが少なくありません。

以下の項目に当てはまる、心当たりがあるという事はありませんか?

対人関係での悩み
・会話の空気が読みにくく、無意識に相手を傷つけることがある
・感情のコントロールが難しく、衝動的な発言や行動で人間関係が悪化
・長期的な友人関係や恋愛が難しい

健康面での悩み
・睡眠リズムが乱れやすい
・強いストレスや自己否定感からメンタル不調を抱えやすい
・アルコール依存症や摂食障害(過食嘔吐)の傾向がある

これらの中の項目に複数当てはまる場合、ADHDの傾向が強いと言えるかもしれません。

この記事では、日本の価値観やジェンダー構造を背景に、ADHD女性が直面する課題と、その中で活躍できる場の選び方について考えてみます。

ADHD女性の生きづらさについて

ADHD(注意欠如・多動性障害)は、発達障害の一種であり、注意力の欠如、多動性、衝動性を特徴とします。
これは男性に多いとされてきましたが、近年の研究では女性にも広く存在していることがわかっています。

しかし、日本社会ではADHD女性が特有の困難を抱えやすい背景があります。
以下では、日本人の価値観やジェンダー観を踏まえながら、ADHD女性が直面する課題を探ります。

日本の社会構造と価値観

日本社会はしばしば「和」を重んじる文化として特徴付けられます。
特に日本女性の特質として「やまとなでしこ」とも表現される物腰の柔らかさ、おしとやかさが求められる事もあります。

ADHDの特性は、それと逆なんですよね。
すごくおてんばで、たくさん動くので、いろいろな活動に参加したり、リスクが大きいことに飛びついてしまったり。

「やまとなでしこ」が求められる国 ADHD女性が生きづらい理由は

協調性、規律、他者への配慮が求められる環境では、ルールを守り、空気を読むことが重視されます。
このような価値観の中では、ADHDによる不注意や衝動的な行動が「わがまま」「自己中心的」と誤解されることがあります。

さらに、日本の教育システムや職場環境では、均一性や効率が求められるため、ADHD特有の特性が目立ちやすく、支援が受けられないまま孤立するケースが少なくありません。
特に女性の場合、家庭内外での期待が重なるため、さらなる負担が生じます。

女性特有のジェンダー観とADHD

日本における女性の役割は、いまだに「良妻賢母」「気配り上手」といった伝統的なイメージに縛られることが多いです。
こうしたジェンダー観の中で、ADHD女性は以下のような困難に直面します。

家事や育児での困難
ADHDの特性として、段取りが苦手であったり、物事を忘れやすいことがあります。
これが家事や育児の場面で「手抜き」や「無責任」とみなされることがあります。

職場での評価
多くの女性が求められる「細やかな気遣い」や「ミスのない作業」が、ADHDの特性によって難しく感じられることがあります。その結果、能力不足と誤解されることも少なくありません。

感情のコントロールと人間関係
衝動性や感情の揺れが原因で、友人や家族との関係が悪化しやすいです。
「感情的すぎる」といった評価が、本人をさらに追い詰めることがあります。

診断の遅れ
ADHDの診断基準は男性に基づくことが多く、女性特有の症状(たとえば過集中や内向的な注意散漫)は見逃されやすいです。
そのため、多くの女性が成人するまで診断を受けられず、自分を責め続けるケースがあります。

社会的支援の不足

日本では、ADHDに対する理解が進んでいるとは言い難く、特に女性に特化した支援はほとんど存在しません。
公的機関や医療機関でも、女性特有の症状(ADHDに起因する摂食障害など)に対応できる体制が整っていない場合が多いです。

また、周囲の無理解も問題です。職場や家庭で「努力不足」として批判されることが多いため、ADHD女性が自己肯定感を持ちにくい環境が広がっています。結果として、彼女たちは燃え尽き症候群やうつ病を併発するリスクが高まります。

ADHD女性の活躍の可能性を広げるために

ADHD女性がより生きやすい職場等の環境を築くためには、以下のような取り組みが必要です。

適職の選択
ADHDの特性は、短時間での集中力が高い、クリエイティブな発想が得意、多様なことに興味を持てるといったポジティブな側面もあります。
これらを活かせる職場を選ぶことが重要です。例えば、変化の多い業務や柔軟な働き方が可能な職場、クリエイティブな業界などが適しています。

(ADHD女性本人側)精神障害者保健福祉手帳を申請する/(職場側)手帳所持者への理解
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の女性が障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を申請し受領することで得られるメリットは多岐にわたります。

・就労支援や職業訓練のサポート
・公共施設での割引や優待(公共交通機関の割引、自転車置き場費用の軽減など)
・税制上の優遇(障害者控除が受けられます)
・社会的なサポートの受けやすさ

行政や国から交付される手帳のメリットを存分に使う事で、行動の可能性が広がります。

職場側も、障害者手帳所持者への理解を深めるように努める事が重要です。
厚生労働省によると、

民間企業の法定雇用率は2.5%です。従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。

事業主の方へ/厚生労働省

とあり、彼女らを障害者に換算する事が出来るので一定のメリットがあります。

心理的安全性の確保
職場で心理的安全性が確保されていることは、ADHDを持つ人だけでなく、全ての従業員にとって重要です。心理的安全性とは、自分の考えや感情を自由に表現できる環境を指します。これにより、ADHDを持つ女性も自分の特性や困難を周囲に伝えやすくなり、必要なサポートを得やすくなります。

ジェンダードイノベーションの視点を取り入れる

ジェンダードイノベーションとは、
ジェンダーの視点を取り入れることで新しい価値や解決策を生み出す取り組みを指します。
この観点からADHD女性の問題を考えると、女性特有の役割期待や社会的プレッシャーを見直すことが重要です。

例えば、家事や育児における負担の軽減を目的としたテクノロジーの活用や、職場での柔軟な働き方の促進は、ジェンダードイノベーションの一環として取り組むべき課題です。また、ADHD女性がその特性を活かしてリーダーシップを発揮できる環境を作ることで、組織や社会全体に新しい視点をもたらすことが期待されます。

ADHD女性の生きづらさは、社会の価値観・ジェンダー観に起因している

日本におけるADHD女性の生きづらさは、社会の価値観やジェンダー観によって増幅されています。
しかし、それらを見直し、支援を広げることで、彼女たちが持つ創造性や柔軟性といった強みを活かせる社会を築くことが可能です。すべての人が自分らしく生きられる未来を目指して、私たち一人ひとりが理解と支援を深めることが求められています。