空き家や所有物件を民泊として活用する場合、何の手続きもせずに宿泊者を受け入れることはできません。
日本で宿泊料を受け取って人を泊めるためには、原則として法律に基づく手続きが必要です。
民泊に利用できる制度は、主に「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「旅館業法」「特区民泊」の3種類です。それぞれ行政への届出・許可申請・認定申請という違いがありますが、この記事では、これらをまとめて「手続き」と表記します。
民泊の手続きは主に3種類です
民泊を始める際は、物件の所在地、建物の用途、予定する営業日数などを踏まえて、次の3制度から適切なものを選びます。
| 制度 | 行政手続き | 営業日数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 住宅宿泊事業法・民泊新法 | 届出 | 年間180日以内 | 住宅を活用しやすい制度です |
| 旅館業法・簡易宿所営業 | 営業許可 | 原則として上限なし | 通年営業に向いています |
| 特区民泊 | 自治体の認定 | 原則として上限なし | 対象地域が限定されます(東京都大田区、大阪市など/2026年9月現在) |
これら3つの制度から自由に選べるわけではありません。物件の所在地、用途地域、自治体条例、建物の構造、消防設備などによって、利用できる制度が変わります。
住宅宿泊事業法・民泊新法
住宅宿泊事業法は、一般に「民泊新法」と呼ばれている制度です。
行政から営業許可を受けるのではなく、都道府県や保健所などへ住宅宿泊事業の届出を行います。
民泊新法による営業日数は、届出住宅ごとに年間180日以内です。1年間は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までとして計算されます。
対象となる建物には、台所、浴室、便所、洗面設備が必要です。
また、次のいずれかに該当する「住宅」でなければなりません。
- 現在、人の生活の本拠として使用されている
- 入居者を募集している
- 所有者や賃借人などが随時居住に使用している
民泊専用に用意され、居住実態も入居者募集もない建物は、民泊新法上の住宅として認められない可能性があります。
さらに、自治体は条例によって営業区域や営業期間を制限できます。
国の制度では年間180日以内であっても、所在地によっては平日の営業が禁止されるなど、実際に営業できる日数がさらに少なくなる場合があります。
民泊新法が向いているケース
- 自宅の一部や空き部屋を活用して民泊を始めたい
- 週末や繁忙期だけ営業したい
- まずは小規模に民泊を始めたい
- 旅館業許可を取るための改修が難しい
なお、家主が不在となる民泊では、原則として国土交通大臣に登録された住宅宿泊管理業者へ管理を委託する必要があります。
民泊新法で運営できる物件を探しませんか?
年間180日以内から民泊を始めたい方へ、希望地域や予算に合わせた購入物件探しをサポートします。
民泊新法では、物件が「住宅」の要件を満たすことに加えて、自治体の条例やマンション管理規約などの確認が必要です。一般的な投資物件ではなく、民泊利用を前提に物件を探すことが重要です。
LINEでは、物件の希望地域、購入予算、自己資金、購入時期などをお伺いします。条件がまとまりましたら、不動産エージェントと連携して物件探しをご案内します。
※法令や条例への適合、届出の受理、収益性を保証するものではありません。
旅館業法・簡易宿所営業
年間180日を超えて本格的に民泊を営業する場合は、旅館業法に基づく営業許可を取得する方法が中心になります。
民泊では、一般的に「簡易宿所営業」の許可を取得します。簡易宿所営業には、民泊新法のような全国一律の年間営業日数制限がありません。そのため、稼働率を高めて事業として収益化したい場合に向いています。
一方、旅館業の営業許可を取得するには、保健所の要件だけでなく、建築基準法、消防法、自治体条例などにも適合させなければなりません。
主に確認される項目は次のとおりです。
- 用途地域で宿泊施設を営業できるか
- 建築基準法上の用途変更が必要か
- 客室面積や換気、採光などの基準を満たすか
- 避難経路を確保できるか
- 自動火災報知設備や誘導灯などが必要か
- 宿泊者の本人確認を適切に行えるか
- 自治体独自の条例を満たしているか
旅館業は「保健所へ申請すれば終わり」ではありません。保健所、消防署、建築担当部署との事前相談が重要です。
旅館業が向いているケース
- 年間180日を超えて営業したい
- 民泊を本格的な事業として運営したい
- 高い稼働率を前提に物件を購入する
- 民泊専用施設として運営したい
- 改修費をかけても採算が合う
営業日数の自由度は高いものの、物件によっては消防設備や用途変更に多額の費用がかかります。物件を購入してから許可が取れないと判明する事態を防ぐため、売買契約前に行政へ確認することが重要です。
旅館業が取れる可能性のある物件を探しませんか?
年間180日の制限を受けず、本格的に民泊を運営したい方へ、旅館業・簡易宿所営業を前提とした購入物件探しをサポートします。
旅館業では、用途地域、建築基準法、消防設備、自治体条例など、一般的な不動産購入とは異なる確認が必要です。物件価格が安くても、許可を取得できなければ民泊事業は始められません。
LINEで希望地域、購入予算、想定する運営方法などをお伺いし、不動産エージェントと連携して条件に合う物件をお探しします。
※営業許可の取得可否は、管轄行政庁による個別判断となります。購入前に保健所、消防署、建築担当部署などへの確認が必要です。
特区民泊
特区民泊は、正式には「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」といいます。国家戦略特別区域法に基づき、対象自治体から認定を受けて営業する制度です。
旅館業法の特例として設けられており、原則として年間営業日数の上限はありません。ただし、特区民泊を実施できる自治体は限定されています。
物件が国家戦略特区内にあるだけでは営業できません。所在地の自治体が特区民泊に関する条例を制定し、制度を運用している必要があります。
また、最低宿泊日数、居室面積、必要設備、近隣住民への説明など、自治体が定める要件を満たさなければなりません。
特区民泊が向いているケース
- 物件が特区民泊の対象区域内にある
- 最低宿泊日数などの条件に対応できる
- 旅館業許可とは異なる方法で通年営業したい
- 中長期の滞在者を受け入れたい
特区民泊を活用できる地域で物件を探しませんか?
年間180日の営業制限を受けない特区民泊に関心がある方へ、対象地域での購入物件探しをサポートします。
特区民泊は、東京都大田区、千葉市、新潟市、北九州市など、制度を導入している一部地域に限られます。対象自治体であっても、用途地域や最低宿泊日数などの条件を確認しなければなりません。
LINEで希望地域、購入予算、購入時期などをお伺いし、特区民泊以外の制度も比較しながら、不動産エージェントと連携して物件探しをご案内します。
※対象区域や新規認定の受付状況は変更される場合があります。認定の取得を保証するものではありません。
3制度以外に必要となる確認
民泊新法の届出、旅館業の営業許可、特区民泊の認定は、民泊開始の中心となる手続きです。ただし、いずれか一つを済ませれば、必ず営業できるわけではありません。
物件によっては、次の確認や手続きも必要です。
消防署への確認
建物の規模や利用方法に応じて、自動火災報知設備、誘導灯、消火器などの設置が必要になります。手続きの際に、消防法令適合通知書の提出を求められる場合もあります。
建築担当部署への確認
住宅を宿泊施設として使用することで、建築基準法上の用途が変わる場合があります。用途変更の確認申請が不要な規模であっても、建築基準法に適合させる必要がないという意味ではありません。
自治体条例の確認
同じ制度でも、自治体によって営業可能な区域、期間、設備、近隣住民への周知方法などが異なります。インターネット上の一般的な解説だけで判断せず、物件所在地を管轄する自治体へ確認しましょう。
管理規約・賃貸借契約の確認
分譲マンションでは、管理規約によって民泊が禁止されている場合があります。賃貸物件で民泊を行う場合は、所有者から転貸や民泊利用について承諾を得る必要があります。
手続きを選ぶ前に確認する順番
民泊の手続きは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 物件所在地の自治体で利用できる制度を調べる
- 用途地域と自治体条例を確認する
- 保健所へ事前相談する
- 消防署へ必要設備を確認する
- 建築担当部署へ建物の適法性を確認する
- 改修費と営業可能日数を収支へ反映する
- 採算が成立する制度を選択する
- 届出・許可・認定の申請を進める
重要なのは、物件を購入してから手続きを調べるのではなく、購入前に営業できる可能性を確認することです。
検討中の地域が特区民泊の対象か確認しませんか?
国家戦略特区に指定されていても、すべての地域で特区民泊を利用できるわけではありません。自治体が条例を制定していることに加えて、用途地域や最低宿泊日数などの条件を満たす必要があります。
検討中の物件が特区民泊の対象区域にあるか、ほかの制度を選ぶべきかをLINEで相談できます。
※物件の所在地を市区町村までお知らせください。対象地域かどうかを確認する手掛かりになります。
まとめ
民泊開始のために必要な手続きは、主に次の3種類です。
- 年間180日以内で営業する「住宅宿泊事業法・民泊新法」
- 通年営業を目指す「旅館業法・簡易宿所営業」
- 対象自治体で認定を受ける「特区民泊」
手続きの難易度だけで制度を選ぶと、営業日数が足りず、期待した収益を得られない可能性があります。反対に、通年営業を目指して旅館業を選んでも、改修費が膨らめば投資を回収できません。
民泊では、「手続きができるか」と「利益が出るか」を同時に確認する必要があります。法律、建築、消防、収支の4方向から物件を調べることが、民泊経営の最初の一歩になります。
